兄貴が事故にあってから音の無い場所に長く居られなくなった。誰もいない部室だとか 図書館の中だとか一人で部屋に居るときだとか静か過ぎる場所が苦手だった。それで、い つも何かにとりつかれたようにCDだとかDVDだとかラジオだとかどんなにつまらない ものでも音の出るものなら何でも、何をしているときでも鳴らしっぱなしにしていた。音 の無い場所は兄貴が眠るあの病室の静かで無機質で拒絶的な空気を連想するからなのだろ う。その中には、銀時の影響で聞き始めたバンドのものもいくつか含まれていた。普段は それほど意識することはないがふとした瞬間にそれを思い出すとひどく微妙な気分になる。 いつまでもあいつの痕が残っているようで悲しいのと悔しいのとよく分からないものが混 ざり合って胸の中から何かを引っ張り出してくる。ずっと、ずっと見ないようにしていた ものを。 増大する青、そして 10
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